金属の硬度と試験方法
金属材料の物性表には、硬度の記載があります。硬度は材料の機械的性質の1つで、材料の変形しにくさ、傷に対する耐性などがそれに当たります。さらに硬度にはブリネル硬さやビッカース硬さなど、数種類の表記方法があります。
これらの表記は硬度を測定する際に用いられる押し込み試験の方法によって異なります。この押し込み試験とは、一定の荷重を材料へ加えてその際にできるくぼみの深さ・面積から、硬さを評価する試験方法で、変形のしにくさを硬さとして評価しています。
この記事では金属の硬度試験4種類と、それらに対応する硬度の表記記号の解説を掲載しています。最後には硬度試験間での硬度換算表も紹介しているので、金属硬度試験の理解を深めたい方は最後までご覧ください。
金属硬度試験の種類
初期の試験方法は1859年頃に開発されたもので、材料に3.5mm程度のくぼみをつける為に必要な負荷で計測されていました。
1900年にJ.A.ブリネルが考案した試験方法が標準化されていきます。
その後ブリネル試験の代替えとして、ブリネル試験が効果的だった材料に対し、より正確な試験を行いたいという要望を受け、1924年にビッカース試験が開発されました。
ビッカース試験より小さく薄く脆い材料を測定できるように、ヌープ試験が1939年に誕生しました。
上の3つの試験は、圧子を押し込むことによってできたくぼみの直径や対角線の長さを測定し、硬さを求める方法でしたが、1908年~1914年頃に開発されたロックウェル硬さ試験は、くぼみの深さを測定することによって硬さを求める方法です。
ブリネル硬さ試験の試験方法と表記記号
材料の表面にφ1~φ10の超硬合金の球(圧子)を接触させ、上から決められた圧力で押し込むことで金属の硬度を測る方法です。
出来たくぼみの直径を顕微鏡などで測定し、計算式は換算表等を使用して金属の硬さを求めます。
くぼみの直径が大きいため、鋳造品・鋳物等の表面が粗い材料に対して使用される試験方法です。
ブリネル硬さの表記記号はHBもしくはHBWです。
ビッカース硬さ試験の試験方法と表記記号
材料表面に角錐形のダイヤモンド(圧子)を接触させ、上から圧力で押し込みます。
ビッカース硬さ試験では、くぼみの形状が正方形になります。このくぼみの対角線の長さを顕微鏡などで測定し、計算を用いて硬さを求める方法です。
くぼみの大きさが最大で0.5mmと小さいので、正確に測定する為には材料の表面を研磨しておく必要があります。
ビッカース硬さの表記記号はHVです。
ヌープ硬さ試験の試験方法と表記記号
ビッカース硬さ試験とほぼ同様の試験方法ですが、使用する圧子が異なります。
ヌープ硬さ試験では、細長いひし形のダイヤモンド圧子を使用します。
対角線の長さはビッカース試験に使用される正方形の圧子の約3倍程度になります。
くぼみの深さがビッカース試験の約1/2と浅いため、より薄く、脆い材料に使用される試験方法です。
ヌープ硬さの表記記号はHKです。
ロックウェル硬さ試験の試験方法と表記記号
材料表面にダイヤモンドまたは超硬合金の球もしくは円錐形の圧子を押し込みます。
圧子によってできた丸いくぼみの深さを測定して硬さを求めます。
くぼみの大きさは1mm以下と小さいため、熱処理工場等の現場で評価する際によく使用される試験方法です。
ロックウェル硬さの表記記号はHRA、HRCです。HRCは焼入硬度の指示などでよく使われる表記記号です。
押し込み硬度試験は現在でも主に上記の4つの試験方法が材質・使用用途などによって使い分けられています。
金属硬度試験の硬度換算表
硬度の測定では、物体が外部の影響により変形を与えられようとする時に呈する抵抗の大小の尺度という硬さの定義のもと被測定物に負荷を与え、どれくらい反発したかを観測し値を算出します。
硬度の単位にはロックウェル硬さ、ブリネル硬さ、ビッカース硬さ、ショア硬さ、ヌープ硬さと複数あり、それぞれ求めている硬度の種類、測定方法が異なります。
硬度が高い材質は摩耗に強く、靭性(粘り強さ)が低いという特徴があります。
靭性の低い金属は衝撃に弱い特徴があるので、硬度だけがその金属の強さを表す物性だと一概には言えないことに注意してください。
また、金属は生材では硬度が低くても熱処理を施すことで高めることができます。硬度は材質を決める際の一つの指標になりますが、同じ材質であっても番手やメーカー、調質によって数値が異なります。
また、他の条件も合わせて比較した方がより良い材質を選定できます。
下の表は近似的換算値として他の単位での近似値をまとめた換算表です。硬度換算時にご利用ください。
ロックウェル硬さ(HRC) | ブリネル硬さ(HB) | ビッカース硬さ(HV) | ショア硬さ(Hs) |
---|---|---|---|
68 | – | 940 | 97 |
67 | – | 900 | 95 |
66 | – | 865 | 92 |
65 | – | 832 | 91 |
64 | – | 800 | 88 |
63 | – | 772 | 87 |
62 | – | 746 | 85 |
61 | – | 720 | 83 |
60 | – | 697 | 81 |
59 | – | 674 | 80 |
58 | – | 653 | 78 |
57 | – | 633 | 76 |
56 | – | 613 | 75 |
55 | – | 595 | 74 |
54 | – | 577 | 72 |
53 | – | 650 | 71 |
52 | 500 | 544 | 69 |
51 | 487 | 528 | 68 |
50 | 475 | 513 | 67 |
49 | 464 | 498 | 66 |
Point
金属の硬度試験方法は代表的なもので「ブリネル硬さ試験」「ビッカース硬さ試験」「ヌープ硬さ試験」「ロックウェル硬さ試験」があり、それぞれ硬さの表記記号が異なります。
硬度の高い金属は、摩耗に強い反面靭性が低いという特徴もあり、硬度が高い=頑丈、というわけでもないことに注意が必要です。
硬度の測定は、物体が外部の影響により変形を与えられようとする時に呈する抵抗の大小の尺度という硬さの定義のもと行われます。
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