金属加工のワンポイント講座

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アルミ加工の基礎【アルミ切削加工】

アルミは加工性に優れ、他の金属素材と比較して非常に軽い特徴を持つ金属です。単位重量あたりの強度が高く、製品の軽量化・効率化のために採用されることの多い素材です。切削加工に使われるアルミの多くは、アルミニウム合金という純アルミにマグネシウムやマンガンなどの他の金属を添加したものです。これにより純アルミの弱点を補いつつ、長所を活かした加工ができるようになっています。アルミニウム合金の種類は多岐にわたり、用途に応じて選ぶことができます。

アルミニウムの特徴

軽い

アルミの比重は2.7です。鉄の7.8や銅の8.9と比べ、約3分の1と軽い金属です。摺動・回転部品の作動効率や燃費の向上、電気消費量の低減など、軽量化による効率化を期待できます。

比強度が高い

アルミは単位重量当りの強度に優れた金属です。純アルミの引張強さは高くありませんが、マグネシウムやマンガンなどを添加した、強度の高いアルミニウム合金もあります。

加工しやすい

アルミは塑性加工がしやすく、さまざまな形状に成形できる素材です。紙のように薄い箔や、複雑な形状の押出形材を製造することができます。切削加工性にも優れ、精密加工に適し、機械部品の素材に使われます。

熱伝導率が高い

純アルミの熱伝導率は約240(W/m・K)と高く、熱しやすく冷めやすい金属です。
この性質から冷暖房装置、エンジン部品、各種熱交換器、放熱フィン、ヒートシンクなどに使われています。

特徴詳細
軽いアルミの比重は2.7と、鉄(7.8)や銅(8.9)と比べ約3分の1と軽い金属です。
錆びにくいアルミは空気中で酸化皮膜を生成し、この皮膜が腐食を自然に防止します。
加工しやすい加工性に優れ、精密加工に適し、機械部品の素材に使われます。
磁気を帯びないアルミは非磁性体であるため磁場に影響されません。
熱伝導率が高い純アルミの熱伝導率は約240(W/m・K)と高く、熱しやすく冷めやすい金属です。
比強度が高いアルミは比強度(単位重量当りの強度)が高いため、輸送機器や建築物などの構造材料として多く使用されています。
導電性が高いアルミの電気伝導率は銅の約60%ですが、比重が約3分の1であるため、同じ重さの銅に比べて2倍の電流を通します。
低温下で使用できるアルミは液体窒素(-196℃)や液体酸素(-183℃)の極低温下でも脆性破壊がなく靭性が大きい特徴があります。
低温プラントやLNGのタンク材、最近では宇宙開発や、極低温の超電導関連といった最先端分野でもこの特性が活躍しています。
光や熱を反射するよく磨いたアルミは、赤外線や紫外線、電磁波、各種熱線をよく反射し、純度の高いアルミほどこの性質が優れています。
暖房器具、照明器具の反射板に使用される他、鏡面加工を施してこの特性を一層高め、エレクトロニクス製品にも多く使用されています。
毒性がないアルミは無害・無臭で衛生的です。なんらかの化学作用で金属が溶出したり化合しても、重金属のように人体を害したり土壌をいためたりしません。この特性を生かして、食品や医薬品の包装、飲料缶、医療機器および家庭用器物などで広く使用されています。
再利用しやすいアルミは他の金属と比べると腐食しにくく、融点が低いため、使用後のアルミ製品を溶かして、再生することができます。再生地金をつくるのに必要なエネルギーは、新地金と比べて3%です。

アルミニウム合金の種類

金属切削加工に用いるアルミは、そのほとんどが合金です。純アルミは軽い一方で柔らかい性質があります。そのため純アルミの加工品は、用途によっては強度が不十分であることがあります。一般的に使用されているアルミは、アルミ本来の弱点を改善するために、マンガンや亜鉛、マグネシウム、ニッケルなどの他の金属を添加した合金です。

合金化することで、強度を高めつつアルミの長所である軽さを併せ持った金属になります。加える金属や量によってそれぞれ違った特徴を持ち、番手という頭文字「A」と4桁の数字で分類されます。

番手添加金属特徴
1000番系なし純度が99%以上の純アルミニウムです。導電性や熱伝導性、耐蝕性に優れています。強度は合金に比べ低いです。
粘り気があるため加工時に切り粉が絡まってしまうと傷や凹みの原因になるので、切削加工時は注意が必要な素材です。代表的な合金番号はA1100、A1070、A1050です。下二桁はアルミ純度を表し、A1100は99%以上、A1070は99.7%以上、A1050は99.5%以上の純度と定められています。
2000番系Cu強度の高い「ジュラルミン」が分類される番手です。強度向上のため、銅(Cu)を多く添加した合金です。銅(Cu)が酸化しやすい性質を持つので、耐食性が低くなります。そのため、アルマイト処理による表面処理を施すことが多い素材です。
アルミは元々溶接加工が難しい素材ですが、特にこの番手は溶接割れが発生しやすいため不向きです。
代表的な素材にA2017(ジュラルミン)やA2024(超ジュラルミン)があります。
3000番系Mnマンガン(Mn)を加え、純アルミニウムの特性である耐食性を維持しながら強度を高めた合金です。
切削素材に用いることは少なく、成形素材として使われることが多いです。アルミ缶の加工に使われています。代表的な合金番号はA3003です。
4000番系Siシリコン(Si)が加えられたアルミ合金です。シリコンの熱に強く、耐摩耗性に優れた性質が付与されています。代表的な合金番号はA4032です。
5000番系Mgマグネシウム(Mg)を添加し耐食性と強度を高めた合金です。加工性にも優れ、アルミニウム合金の中で使用頻度の高い素材です。代表的な合金番号は板材のA5052、丸材のA5056とA5083です。A5052は板厚素材の精度が比較的良いので、厚みに公差がなければそのまま4面仕上げで使用できます。
6000番系Mg Siシリコン(Si)、マグネシウム(Mg)を添加し、5000番系よりも強度や耐食性が優れた合金です。代表的な合金番号のA6061は、さらに銅(Cu)を添加して熱処理することで、SS400程度の強度があります。A6063は押出成型性が良いため、アングルやチャンネルなどの型材が広く出回っています。
7000番系Zn Mg亜鉛(Zn)とマグネシウム(Mg)を添加し、熱処理による硬化でアルミニウム合金の中で最も強度の高い素材です。代表的なA7075は超々ジュラルミンと呼ばれ、航空機の部品や車両に使用されています。
アルミ加工
アルミ加工
アルミ加工

ジュラルミンとは

アルミニウム合金の中でA2017、A2024、A7075はそれぞれジュラルミン、超ジュラルミン、超々ジュラルミンと呼ばれます。ジュラルミンは銅を添加することで強度を高めた合金です。銅が腐食しやすいという性質から、耐食性が低い合金であるため、腐食環境での使用ではアルマイト処理などの防錆処理が必要です。

超ジュラルミン

超ジュラルミン(A2024)は、ジュラルミン(A2017)より銅とマグネシウムの添加量が多いアルミニウム合金です。銅の比率が増えた分、ジュラルミンよりさらに強度が高く、切削加工性も同様に優れています。

ジュラルミンと同様、耐食性が低い素材であるため、アルマイト処理などの防錆処理が必要です。耐食性を補うために、表面に純アルミ系のA1230をはり合わせ耐食性を改善したA2024PCという合わせ板があります。

超々ジュラルミン

超々ジュラルミン(A7075)は、アルミニウム合金の中でもトップクラスの強度を持つ素材です。銅が1.2~2.0%、マグネシウムが2.1~2.9%、亜鉛が5.1~6.1%含まれています。

鋼材並みの強度・硬度があり、航空機の構造材にも使用されます。ブリネル硬度で見ると、超々ジュラルミンの硬度は160HBで、鋼材のSKD11の硬度は58~63HB、ステンレス材のSUS303・SUS304は187HBです。

単純に硬度の高さはステンレスが優れていますが、比強度で比較すると超々ジュラルミンが約2倍優れています。

応力腐食割れや耐食性については、使用環境に注意する必要があります。この弱点を補うため、表面にA7072を貼り合わせ耐食性を改善したアルミ材があります。規格として流通しているのは丸棒材と板材のみです。

アルミ加工のメリット

日本のものづくりの現場では様々なロボットが活躍しています。以前は人の手で生産していたものも、工場の自動化が進んでいます。自動車産業や食品産業、半導体産業など多くの業界で産業ロボットが導入されています。

それらの部品の素材の中でも、使用率が高いのがアルミです。アルミは下記の条件を満たす素材です。

軽量化に適している

アルミは鉄やステンレスと同じ体積で比べると3分の1以下の重量です。軽く運搬しやすいため加工がしやすく、輸送コストを下げることもできます。

金属を素材にして作る装置は、大型化すればそれに伴い重量も大きくなります。そのため重量によっては2階以上の建物に設置することが困難になることもあります。そのような場合にアルミ加工で部品を軽量化することができます。

アルミは単位重量あたりの強度(比強度)が高く、ジュラルミンと呼ばれる2000番系7000番系は特にこの性質が優れています。そのため十分な強度を維持しながら部品の軽量化を進めることができます。

複雑形状の加工に適している

アルミは加工性に優れ、切削加工に適した素材です。複雑な形状でも比較的加工時間が短く、再現性の高い加工ができます。

強度が高くて軽い金属は、他にマグネシウム合金やチタン合金がありますが、これらは切削加工において難削材にあたります。精度を出せない場合や、出せても加工に時間がかかるため、加工性の良い素材に比べて加工費は高くなります。

5000番系のアルミニウム合金は加工性が良いため、複雑形状や精度が必要な加工に適しています。

腐食に強い

金属は基本的に空気中で腐食していきます。アルミは空気中の酸素と反応して表面に酸化皮膜が形成され、腐食しにくい性質があります。この自然にできた酸化皮膜は非常に薄い膜なので、環境によっては腐食する可能性があります。そのため人工的に酸化皮膜を生成するアルマイト処理をすることもあります。

アルミ加工を選定する上での注意点

アルミは優れた面の多い金属です。しかし、アルミを選定する際には以下の側面も持つという点に注意が必要です。

  • 7000番系の超々ジュラルミン(A7075)などの特別強度の高いもの以外は、他の金属に比べると強度が低く、強い衝撃でへこんだり、傷がつきやすい素材です。摺動部分での使用では摩耗します。
  • アルミは他の金属と比べると線膨張係数が高く、温度変化による影響で寸法が変化しやすい素材です。

アルミ加工上の注意点

アルミは加工性が非常に良い金属ですが、加工中に切削工具へ溶着する可能性があるという点に注意が必要です。アルミは熱伝導率が高いため、加工中に熱が逃げやすいと思われますが、加工品の形状やアルミの種類によっては溶着が起こります。

溶着により切削工具にアルミが溶けて付着することで、構成刃先と呼ばれる刃先ができます。加工精度が出なくなり、細い刃物はこの現象により折れて加工品の中に埋まってしまうこともあります。この溶着を防ぐ対策は主に2つあります。

エアブローによる切り粉の排除
加工により発生した切り粉をこまめに取り除くことで、溶着をある程度防ぐことができます。袋穴や細いタップ加工では、切り粉を排出するために一回の切込み量を調整します。

切削油の使用
アルミは鉄や銅に比べて比重が3分の1程度と軽く、切り粉も切削油に比較的に浮きやすいため溶着のリスクを減少させることができます。切り粉が切削工具へ絡まらないようにするには多量の切削油を流す必要があります。

アルミ加工事例

アルミ加工
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アルミ切削加工
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アルミ切削加工
A2017
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A5052
アルミ切削加工
A6061

Point

アルミは比重が鉄の3分の1程度と軽く、単位重量当りの強度が高い金属です。
他の金属を化合することで性質を付与することができ、その割合によって性質が異なります。
切削加工性に優れ、複雑な形状の加工に適した金属です。
A2017、A2024、A7075はアルミの中でも特に強度が高く、その反面耐食性が低いので使用環境を選ぶか、アルマイト処理による防錆処理が必要です。

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