切削加工素材

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インコネル

インコネルはニッケル合金の一種で、非常に優れた耐熱性、耐食性、耐酸化性、耐クリープ性、強度、硬度、加工性を持っています。そのため、航空宇宙、原子力、石油、化学などの産業で広く使用されています。

インコネルの特徴

耐熱性が高い
インコネルは約700℃の高温環境で使用しても十分な強度を維持します。クリープ強度も優れており、高温での持続的な応力による変形が少なく、長期間の高温使用にも耐えられるため、航空宇宙やガスタービンエンジン、原子力発電所など、高温での使用が求められる産業において広く使用されています。
耐食性が高い
ニッケルは酸化や腐食に対して非常に耐性があり、さらにクロムやモリブデンなどの添加によって、耐食性が向上します。インコネルにはこれらの元素が含まれており、非常に高い耐食性が実現されています。また、高温下では表面に酸化皮膜が形成され、さらなる酸化や腐食を防ぐことができます。
難削材
高温下でも強度を維持するため、切削時に発生する熱による影響が大きいことや非常に硬いことから、一般的な工具鋼や高速度鋼の切削工具では加工が難しい素材の一つです。しかし、切削条件や冷却方法を最適化することによって、高品質な加工品の製作が可能となります。

インコネルの種類

インコネル600

高温下での酸化に対して強く、水素化物、硫化物、塩化物などの腐食性のある環境でも優れた耐性を持っています。

インコネル625

耐食性に優れ、クロライドイオンによる腐食に強く、高温環境下でも強度を維持します。

インコネル718

高温下での耐久性に加え、疲労強度が高いです。インコネル600、625よりも切削加工性が優れています。

インコネルX750

析出硬化型のNi-Cr合金で、高温下での強度、耐食性、耐疲労性に優れており、磁気特性を持ちます。

インコネルの用途

航空宇宙産業

《ジェットエンジンのタービンブレード》
ジェットエンジンのタービンブレードは、エンジンの中心部に位置するタービンで使用されます。タービンブレードは、高温の高速ガス流の中で回転し、その運動エネルギーを回転軸に伝えることで、圧縮機やファンを回転させます。タービンブレードは、高温・高圧環境下で作動するため、非常に高い耐熱性と強度が求められます。インコネル製のタービンブレードは、その耐熱性、強度、耐食性の高さから、高温下での変形やクリープを防ぐことができるため、高出力で安定した運転が可能です。
《燃焼器》
燃焼器は、ジェットエンジンの中でも燃料と空気を混合して燃焼させ、高温・高圧のガスを生成する部分です。この高温・高圧のガスが、タービンを駆動するためのエネルギー源となります。燃料を効率的に燃焼させることが求められるため、高温でありながらも、燃焼器の構造が破壊されることがないような耐熱性能が求められます。また、高温・高圧のガスが生成されるため、ガスの腐食性や疲労強度にも耐える必要もあります。インコネルは高温環境下での強度が非常に高いため、変形やクリープを防ぎ、耐久性や耐食性にも優れていることからジェットエンジンの性能向上に貢献しています。さらに、燃焼器には熱を制御するための冷却システムが必要です。インコネルは高い熱伝導率を持っているため、燃焼器の冷却システムにも適しています。燃焼器内部の高温ガスが冷却され、ジェットエンジンの長時間の運転に対する耐久性が向上します。
《排気口》
ジェットエンジンの排気口は、燃焼室内で燃焼した燃料と空気の混合物から生成された高温・高圧の排気ガスを放出する役割を持っています。これらの排気ガスは、ジェットエンジンが発生する推力を生み出すのに不可欠な要素であり、ジェットエンジンの性能や効率を決定する重要な要素の一つです。一般的に、ジェットエンジンの排気口は、高温・高圧の排気ガスを熱保護材で覆われた筒状の構造物から放出されます。この熱保護材には、高温の排気ガスに耐えるために、耐熱性が必要です。インコネルは、高温に耐えうる耐熱性能を持ち、熱保護材の素材として使用されることがあります。
《防氷システム》
ジェットエンジン搭載の航空機が高高度を飛行する場合、周囲の温度が氷点下に下がり、空気中の水分が結露して凍結し、航空機の表面に氷が付着することがあります。この氷が増えると、航空機の重量が増加し、空気抵抗が増えて飛行性能が低下し、最悪の場合、墜落の原因となることがあります。そこで、航空機の翼や尾翼などの表面に防氷システムを装備することで、氷の付着を防止します。防氷システムには様々な種類がありますが、その一つがインコネル製の電熱防氷システムです。電熱防氷システムは翼などの表面に設置された特殊な素材の加熱によって、氷の付着を防止します。インコネルは高い耐食性と高い耐熱性を持ち、電気抵抗が低く、電熱防氷システムに適した素材です。また、インコネルは繰り返しの加熱・冷却サイクルに耐えることができるため、長期間の使用にも耐えうる高い耐久性を持ちます。防氷システムは、航空機の飛行安全性を確保するために非常に重要な機能であり、インコネルのような高性能素材が使用されることで、高い安全性と信頼性を確保しています。

化学プロセス産業

《硝酸プラント》
硝酸プラントは、窒素肥料や爆薬などの製造に必要な化学物質である硝酸を量産する工場です。硝酸は、アンモニアと空気中の酸素を反応させることで合成されます。この反応には高温・高圧が必要であり、反応後には水と硝酸の混合物が生成されます。この水と硝酸の混合物を蒸留して純度の高い硝酸を得ます。硝酸プラントでは、反応器、蒸留器、加熱炉、冷却器などの様々な装置が使用されます。これらの装置は、高温・高圧の環境下で作業を行うため、非常に耐久性が要求されます。また、反応時に発生する酸性ガスや蒸気、硝酸などの腐食性物質も存在するため、腐食に対しても耐性が必要です。インコネルは、高温・高圧下での使用に適した耐熱性や耐久性、腐食に対する耐性を持つことから硝酸プラントの装置素材として広く使用されています。また、インコネルは高温・高圧下での摩耗やクリープに対しても優れた耐性を持っており、装置の寿命を延ばすことができます。
《石油化学プラント》
石油化学プラントは、石油や天然ガスなどの炭化水素類を原料として、エチレン、プロピレン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの有機化合物や化学製品を生産する工場です。これらの有機化合物は、様々な工業製品や日用品の製造に欠かせないものであり、私たちの生活に密接に関わっています。石油化学プラントでは、高温・高圧の反応器内で炭化水素類を分解し、これらの有機化合物を製造するために、インコネルなどの耐熱合金が使用されます。また、製造工程においても化学薬品に耐性があるインコネルが配管や弁などの部品として使用されることがあります。
《廃棄物処理プラント》
廃棄物処理プラントは、家庭や産業などから出る様々な種類の廃棄物を収集し、リサイクルや再利用が可能なものを適切に分別する施設です。一般的に廃棄物処理プラントでは、廃棄物を燃やす焼却炉や微生物を用いた分解処理を行うバイオマス処理施設などがあります。これらの処理施設での処理には、高温や腐食性の物質、高圧環境など厳しい条件が伴います。そのため、廃棄物処理プラントに使用される機器やパイプラインには、耐久性、耐食性、耐熱性、耐圧性が求められます。インコネルは、それらの条件を満たす高温・腐食性環境下での使用に優れた性能を持ち、廃棄物処理プラントで使用される機器やパイプラインの素材として適しています。また、廃棄物処理プラントでは燃焼により多量の煙や排気が発生するため、それらの排気ガスを浄化する装置も必要とされます。この装置の中にも高温・高圧環境があるため、インコネルが使用されることがあります。

医療産業

《医療器具》
インコネルは高強度でありながら柔軟性もあり、さらには生体組織との相性がよいことから外科用器具、口腔外科用器具、眼科用器具などの医療器具に使用されます。例えば、歯科用途では歯科インプラントのスクリュー部分や歯の冠部分に使用され、高い生体親和性と耐久性を発揮しています。また、関節や骨に埋め込むインプラントにも使用され、特に高い耐久性と強度が求められる膝関節や股関節の人工関節に広く使用されています。医療器具の中でも特に高温・高圧の環境に適しており、エンドスコープの先端、心臓カテーテルの先端、手術用のグリップやスカルプルなどに使用されます。また、インコネルの耐食性も優れているため、人体内での薬剤の投与や注入のための針やシリンジ、ポンプ部分にも使用されます。他には、診断器具の一部でも活躍しています。例えば、MRI装置においては強磁場に対する耐久性が求められるため、MRI装置内部の機器に使用されます。また、X線撮影に使用されるコンピュータ断層撮影装置(CT)のX線管や検出器にも使用されています。
《医療機器》
医療機器の製造において、耐腐食性、高温耐性、生体適合性などの特性から利用されています。例えば、心臓血管用医療機器には血液中に含まれる塩分や酸素、血流などが要因となって腐食が進行するため、耐食性が求められます。インコネルは高い耐腐食性を持つため、心臓血管用ステント(血管を拡張するための管状の医療機器)や弁膜(心臓弁を補修するための医療機器)などの製造に使用されています。さらに、高温・高圧の蒸気滅菌器に使用される部品や人工呼吸器のバルブ、薬液噴霧器など、医療機器の多岐にわたる部品に使用されることがあります。これらの部品は、高温・高圧や薬液との接触に耐えうる耐久性が求められます。インコネルはそのような厳しい環境下でも優れた性能を発揮するため、医療機器の製造に広く使用されています。
《医薬品製造装置》
医薬品は高い品質基準を満たす必要があり、その製造工程は高い精度が求められます。医薬品製造装置は、医薬品の製造工程で必要な各種工程を自動化し、安定した品質を確保するための装置です。医薬品製造装置には、様々な種類があります。例えば、医薬品の混合や攪拌、加熱、冷却、遠心分離、蒸留、乾燥、粉砕などの工程に特化した装置があります。また、医薬品の製造において不可欠な純水を製造する純水装置も医薬品製造装置の一つです。インコネルは高温の蒸気や溶剤に対して耐久性があり、蒸留装置の部品やタンクの材料として使用されることがあります。医薬品製造装置には、GMP(Good Manufacturing Practice)に準拠した製造が求められます。GMPとは、医薬品の製造工程で品質基準を満たすための厳格な指針のことであり、医薬品製造装置の設計や製造にも反映されています。インコネルは、高い耐久性や品質基準を満たす性能を持っているため、GMPに準拠した医薬品製造装置の材料として使用されることがあります。

電子産業

半導体産業において、インコネルはウェットプロセス用の容器、ピンセット、ワイヤーなどのパーツに使用されます。半導体ウェットプロセスは、ウエハ表面の清浄化やエッチングなど高い精度が求められる工程であり、このような環境下で耐食性が高く、優れた化学的安定性を持つため、重要な役割を果たしています。次にリチウムイオン電池の製造において、高温や腐食性のある環境下でも耐久性が高いことからセパレーター、電極、導電体などの部品に使用されます。また、インコネルは軽量で高い強度を持ち、長期間の使用にも耐えることができるためスマートフォンのバッテリー端子やコネクター、カメラのレンズ枠、スピーカーのコーン、ノートパソコンのヒンジ部分など、様々な部品にも使用されています。さらに、半導体産業、電子機器産業、リチウムイオン電池製造産業などの様々な電子産業において、高温での使用が求められる箇所や半導体のバンプボンディング(接合技術)や、電子部品のはんだ付けなどの高温処理において、インコネルは優れた性能を発揮することが知られています。

自動車産業

《エンジン部品》
ターボチャージャーや排気ガス処理装置の部品に使われます。ターボチャージャーは、エンジンに空気を送り込むタービンを回転させてエンジンの出力を上げる装置で、高温・高圧の排気ガスを受ける部分にインコネルが使われます。排気ガス処理装置は、排気ガス中の有害物質を取り除くための装置で、高温環境下での耐久性が求められます。また、インコネルはエンジンバルブの素材としても使用されます。エンジンバルブは、燃焼室内で燃料と空気を混合する役割を持ち、高温・高圧の環境下での動作が要求されます。インコネルは高温環境下でも熱膨張率が低く、バルブの動作による摩擦や磨耗を抑えることができます。さらに、自動車のエキゾーストシステムにおいて、排気ガス中の酸化還元反応を促進するキャタリストの素材としても使用されます。キャタリストは、排気ガス中の有害物質を無害な物質に変換するための装置で、高温・高圧・酸性環境下での耐久性が求められます。
《ブレーキシステム》
自動車のブレーキシステムには、フリクションブレーキと呼ばれるタイプとディスクブレーキと呼ばれるタイプがあります。インコネルは、ディスクブレーキに使用されるパーツに広く用いられています。ディスクブレーキは、回転するディスクにブレーキパッドを押し付けることで摩擦を生み出し、車両を減速する仕組みです。インコネルは高温・高圧・高摩耗環境に耐えうる耐久性があり、ディスクブレーキに使用されるローターやキャリパーなどの部品に適しています。また、優れた腐食抵抗性を持っており、ブレーキシステムに使用される部品の耐久性や信頼性を向上させることができます。

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